先日、銀座の画廊をいくつか巡っていて出会った3つのエピソードその1。
90歳近い女性の画家さんとの会話。忘れたくないから、おっしゃった言葉できるだけそのままに残す。
会話の始まりは、
「あなた、初めましてよね。通りがかりで入ってきて、私の絵を長い時間見てくれて、うれしいわ。どうぞ座って。」
「こうね、筆に絵の具を浸して、遠くから走ってきて、紙に一撃をくらわすの。そうやって、ここにある絵はすべて3日ほどで書き上げたのよ。だって、何日もかけていたら、最初に一撃をくらわした時のことを、忘れちゃうじゃない。だから、やるとなったら、3日で集中してやりあげるの。」
歩道に面したガラス張りの画廊。パワーにひかれて吸い込まれるように入った。大きな画用紙に、蛍光色でドカーンと描かれている8枚ほどの絵。絵というより「踊りだしそうな壁」かな。見れば見るほど元気をもらう作品で、長い時間いたんだと思う。
「もちろん、その絵の具がどれだけ垂れるかは、絵の具の調合なんか工夫して、計算してるわよ。でも、どこまで垂れるか、計算通りになんてならないわ。それが人生を、私を、表してるのよ。その色はどう調合しているのかなんて質問されることがあるけど、そんなことはどうでもいいの。この絵がそのまま私なんだから。」
しばらくおしゃべりしていると、次の展示会の担当者らしき男性が入ってきた。その方に向かって
「私ね、スタイルを変えたの。ほら、この前とは違うの、あなたわかるでしょ。これからはこの方向で行くから! この方が私らしいわ。やっとスタートラインに立ったのよ。だからもうちょっと命が欲しいわね。」
さらに、私がダンサーだというと
「私ダンスをしている人は大好きなの!!!!死ぬまでダンスへの愛があって、体と向き合ってね、ほんとに素晴らしいと思うわ。あの絵は、踊る人を書いたの。私はダンスの基礎がある人だけをモデルにしたクロッキー会を開いているのよ。もう、ほんとにダンスは種類問わずなんでも好きよ。来週から療養で東京を離れるから、あなたの公演は見に行かれないけど、応援しているわ。通りすがりで入ってきたあなたが私の絵を長いことじっと見てくれて、すごくうれしかった。お話しできて楽しかったわ。ありがとう。がんばってね」
こちらこそ、本当にありがとうございました。
絵を描くことを「一撃をくらわす」って表現するその方の、エネルギーと潔さ。そして、さらに次を目指して展開していく姿勢。なんて方に出会ってしまったんだろう。
帰り道、その方のプロフィールを拝見したら、同じ、高知県出身!!
「はちきん」の鏡のような方でした。
この方にとっての絵がそうであるように、私にとっての踊りもそうありたい。私も死ぬまで踊っていることだけは決まっているのだ。
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澤村祥 展 I’M2018 10/15月-10/20土@銀座 ガレリアグラフィカbis
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私の一撃はこれ!公演、残7席です。
11/30金19:30Open 20:00Start@南青山Spoonbill
建物まるごと全フロア舞台化360°シアター「今夜、霧の中を」