初演の振返り(生舞台の意味を追求する)

360°シアター「今夜、霧の中を」は、動画でなんでも見れる時代だからこそ、生舞台の良さや、生舞台じゃないとできないことを考え追求した結果、生まれた舞台です。

舞台をつくる人間として、無条件に生は良いと思いたいけど、実際そうも思っていないからだ。

 

 鑑賞型か参加型か 

例えば、バレエ公演に行ったとして、2階後方の安い席から超小さいバレリーナしか見れないんだったら、舞台のDVDの方が良いなって思うのが正直なところ。生は良いけど、席による

もしこれが、音楽ライブで、お客さんも一緒に大熱唱でタオル振り回すんだったら、歌手が米粒にしか見えなくても、ライブは良いねーって思える可能性が高い。

バレエのような「鑑賞型」は、音楽ライブのような「参加型」より、生の良さを全員に(座席位置に関わらず)感じてもらうのは難しい。

「今夜、霧の中を」では、お客さんがわかりやすく参加する演出はないから、参加型か鑑賞型かでいうと、鑑賞型。だから、鑑賞型でも生舞台に行って良かったと全員に思ってもらえる仕掛けを、うんと考えないといけない。

結論からいうと、お客さんが歩き回って視点を選ぶ自由をつくるという仕掛けにしたのが360°シアターだ。鑑賞型でも、鑑賞スタイルを工夫することで、生舞台に意味をつけられると考えた。

 

 ギャラリーと舞台の間 

なぜ、そんな仕掛けにしたのか・・・ヒントは、ギャラリーだった。

鑑賞型の中で、最も自由な鑑賞スタイルをとっているのは、ギャラリーだと思う。

なぜなら、ギャラリーでは、見たい作品を、見たい順番で、見たい立ち位置や視点から、見たい時間だけ見れる。好きな作品は1時間でも見てていいし、興味の薄い作品は1秒で通り過ぎてもいい。やっぱり気になる作品は戻ってきて再度見ることもできる。近くから、遠くから、斜めから、立って、座って、首を傾けて・・・いろんな立ち位置や視点で見ることもできる。

ギャラリーに行くたび、なんて自由な鑑賞スタイルなんだろうと思う。逆に、舞台って、なんて客を縛りつけているものなんだと思う。

そこで、360°シアターは、ギャラリーと従来の舞台の間を目指した。

具体的には、ギャラリーがお客さんに与えている自由ポイントを、

①見る順番

②見る長さ

③立ち位置・視点

と整理して、それぞれ、360°シアターではどの程度自由に設計するかを考えた。

①見る順番②見る長さに関しては、舞台の流れは決まっているから、見たいものを見たいだけ見ることはできない。けれど、パフォーマンスは建物の複数個所で同時多発的に進むので、舞台の流れの中で、どのパフォーマンスをどの順番でどのくらい見るかは、お客さんは選ぶことができる。

③立ち位置・視点に関しては、建物全エリアではないが、歩き回りながら、立ったりしゃがんだり、覗いたり振り返ったり、自由に選ぶことができる。

360°シアターは、参加型ではなく、鑑賞型ではあるものの、①~③に一定の自由があり、お客さんが能動的に選んでいく鑑賞スタイルに設計することで、生舞台に行く意味を強化した。

それと、もうひとつ。

冒頭に、鑑賞型としてバレエ公演の例を挙げて「生舞台は良いが、席による」と書いたが、この点も同時に解決できた。パフォーマンスはいろんな場所に神出鬼没。ある演者を間近で見ていたら、遠くで別のことが始まっていたり、その間にすぐ後ろに別の何かが迫っていたり・・・。正面やセンターといった舞台の座標をとっぱらったから、どこが見やすく良いポジションという概念が無くなった。

 今後のトライ 

こういう仕掛けの舞台はまだまだ多くない。だから、お客さんも慣れてない。せっかくある自由を楽しめなければ、戸惑って終わってしまうだけ。自由度をどの程度に設定するか、その自由を最大限楽しむためにどのようにお客さんを導びくか、初演を踏まえて、次回以降の360°シアターでさらに練っていきたい。

 

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・・・と書いておきながら、2019/2/22,23に予定していた「今夜、霧の中を」は中止することになりました。楽しみにしてくださっていた皆様、ごめんなさい。パワーアップして再演や新作を発表していきますので、引き続き応援お願いします!

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